世田谷区には、ひきこもりや生きづらさを抱えている方が、安心して過ごしたり、人とゆるやかにつながったりできる場所があります。
ゴチャせたがやでは、そうした地域の居場所や支援先を実際に訪ね、「どんな場所なのか」「どんなふうに過ごせるのか」を少しずつ紹介しています。
2026年8月11日、「居場所カフェ コモリナ」を訪問しました。
今回は残念ながら代表の方にはお会いできませんでしたが、1時間ほど滞在させていただきました。
この日は「珈琲・焙煎体験」のイベントが行われており、おいしいコーヒーをいただきながら、実際のコモリナの雰囲気に触れることができました。

訪問概要
訪問日: 2026年8月11日
訪問先: 居場所カフェ コモリナ
訪問内容: 居場所の見学、珈琲・焙煎体験イベント
※今回は代表の方へのインタビューは行っていません。この記事では、当日の訪問で感じたことと、現地でいただいた「2025年度事業報告書」から確認できた内容をご紹介します。
「居場所カフェ コモリナ」ってどんなところ?
コモリナは、
「ひきこもりの、ひきこもりによる、ひきこもりのための居場所」
として、ひきこもり経験者の方々が立ち上げた居場所です。
一方で、ひきこもり経験のある方だけの場所にするのではなく、地域に開かれた、さまざまな人が気軽に訪れることのできる場所を目指しています。
事業報告書には、
「自分たちだけの居場所にしたくない」
「地域に開かれた、誰でも気軽に来れる場所にしたい」
という思いが紹介されています。
「家じゃなくても、こもれる場にしたいよね」という話し合いから、「居場所カフェ コモリナ」という名前が生まれたことも紹介されていました。
安心して過ごすための「居場所の約束」
コモリナでは、多様な人が安心して同じ場所で過ごせるよう、「居場所の約束」が設けられています。
たとえば、
- 相手を否定しない
- どんなときも相手を尊重する
- 政治・宗教などの勧誘をしない
- 個人情報を無理に聞き出さない
- お金の貸し借りをしない
- 困ったときは管理人に相談する
- 疲れたときは自由に帰って大丈夫
といった内容です。
「居場所」というと、何かの活動に参加したり、ほかの人と積極的に話したりする場所を想像するかもしれません。
しかし、安心してその場所にいられること自体も、居場所の大切な役割なのだと思います。

居場所から生まれた、さまざまな活動
2025年度事業報告書を見ると、コモリナでは普段の居場所だけでなく、活動がさまざまな方向へ広がっていることが分かります。
大きく、
1.イベント開催
2.表現活動
3.地域文庫活動
4.講習会開催
5.広報活動
という5つの活動が紹介されています。
コモリナマルシェ
「コモリナマルシェ」では、さまざまなワークショップが開催されています。
2025年度には、レゴブロック製作、レジンでアクセサリー作り、和風小物作り、ボードゲーム体験、フラワーバッグ作り、耳つぼ・経絡体験、布ぞうり作りなどが行われています。
事業報告書では、ひきこもり当事者だけでなく地域の方も多く訪れたことが紹介されています。
年齢や立場の違う人が、同じ活動を一緒に楽しめる機会になっていることが分かります。
コモリナ文庫・ブックカフェ
地域の方から、
「このあたりは図書館カウンターはあるけれど、本を手に取ってみることができないので地域文庫があるとうれしい」
という声があったことをきっかけに、「コモリナ文庫」が始まったそうです。
本を読んだり、本について語り合ったりする「コモリナブックカフェ」などにも活動が広がっています。
事業報告書によると、2025年4月から2026年1月までに144日開所し、延べ160名が利用したとされています。
そのうち、ひきこもり当事者の利用が約77%を占めています。
パソコン教室
パソコン教室も開催されています。
講座では、Canva、ChatGPT、スプレッドシートなども使われています。
事業報告書には、参加者へのアンケート結果も掲載されており、「できた」と感じられる経験につながっている様子が紹介されています。
単にパソコンの使い方を学ぶだけでなく、参加者が自分でできることを少しずつ増やしていく機会にもなっているようです。
ひきこもり経験者だけではなく、地域の人も訪れる場所
事業報告書の利用実績を見ると、コモリナには、ひきこもり当事者・経験者だけでなく、家族、支援者、地域の方なども訪れています。
コモリナマルシェでは、地域の方が来場者の半数以上を占めたことも紹介されています。
また、通常の居場所とは異なる形で地域の方にも利用してもらう「オープンデイ」も行われています。
「ひきこもりの方の居場所」と「地域の人が集まる場所」を完全に分けるのではなく、同じ場所をいろいろな人が利用する。
そこから自然なつながりが生まれていることも、コモリナの特徴の一つだと感じます。
対話を大切にする取り組みも
事業報告書には「オープンダイアローグ体験会」の実績も掲載されています。
オープンダイアローグとは、相手の話をすぐに評価したり結論を出したりするのではなく、対話を重ねていく考え方です。
体験会には、ひきこもり当事者、発達障害当事者、精神障害当事者、家族、支援者など、さまざまな立場の方が参加しています。
参加者の自由記述からも、「話すこと」と同じくらい「相手の話を聴くこと」を大切にした場だったことがうかがえます。
実際に訪問して感じたこと
今回の訪問で特に印象に残ったのは、スタッフの皆さんの様子でした。
訪問した日は「珈琲・焙煎体験」のイベントが行われていました。
数名のスタッフの方が、それぞれ手分けをしながらイベントの準備や対応をされていました。
誰か一人がすべてを行うのではなく、それぞれができることを持ち寄りながら、一緒にその日の場をつくっているように見えたことが印象に残っています。
私も1時間ほど滞在し、とてもおいしいコーヒーをいただきました。
イベントに参加する、人と話すというだけではなく、コーヒーを飲みながら同じ場所で時間を過ごす。
そうした過ごし方ができることも、居場所の大切な部分なのだと感じました。
「もう一緒にこもろう」という考え方
事業報告書の中で、特に印象に残った言葉があります。
「もう一緒にこもろう」
という言葉です。
家で一人でこもるのではなく、コモリナで誰かと一緒に「こもる」。
無理に人と話したり、何かを始めたりすることを求めるのではなく、まず同じ場所にいることを大切にする考え方です。
居場所は、「何かができるようになるためだけの場所」ではないのかもしれません。
安心してその場にいられること。
誰かと同じ空間で過ごせること。
そして、本人がやってみたいと思ったときには、活動に参加したり、誰かと話したりすることもできる。
そうした選択肢があること自体が、居場所の大切な役割なのだと思います。
本人・ご家族に伝えたいこと
「居場所に行ったら、人と話さなければいけないのでは」
「何かの活動に参加しなければいけないのでは」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、地域にはいろいろな居場所があります。
人と話したい日に訪れる人もいれば、イベントを楽しむ人もいます。
本を読んだり、コーヒーを飲んだり、誰かと同じ場所にいることから始める人もいます。
すぐに利用する必要はありません。
まず、
「地域には、こういう場所もあるんだ」
と知っておくことも、一つの選択肢になると思います。
ゴチャせたがやとのつながり
今回の訪問で、ゴチャせたがやの居場所づくりにも参考になる点が多くありました。
ゴチャせたがやでも、「何かをしなければいけない場所」ではなく、まず安心してその場にいられることを大切にしています。
一方、コモリナの活動を見ていると、居場所からイベント、地域文庫、講習会、対話などへ活動が広がり、そこに地域の人も加わっています。
居場所を「特定の人だけが利用する場所」として閉じるのではなく、本人が安心できることを守りながら、地域ともゆるやかにつながっていく。
これは、地域の中で孤立を減らしていくうえでも大切な視点だと感じました。
地域には、それぞれ特徴の違う居場所があります。
一つの場所ですべてを担うのではなく、それぞれの居場所がゆるやかにつながり、本人が自分に合った場所を選べるようになることも大切だと考えています。
おわりに
今回は残念ながら代表の方にはお会いできませんでした。
それでも、1時間ほど実際にコモリナで過ごしたことで、資料を読むだけでは分からない雰囲気に触れることができました。
珈琲・焙煎体験でいただいたコーヒーも、とてもおいしかったです。
そして何より、スタッフの皆さんが手分けしながら、一緒にその日の場をつくっている様子が印象に残りました。
当日対応してくださったコモリナの皆さん、ありがとうございました。
ゴチャせたがやでは、これからも世田谷区やその周辺にある居場所、相談先、支援機関などを実際に訪ねながら紹介していきます。
「こんな場所も紹介してほしい」という情報がありましたら、お気軽にお寄せください。
